<アーカイブへ>いるいる、机の下で両手をモゾモゾ動かしている女の子が。視線は机の下に向く。教壇からは見えにくい後方に座った学生に多い不審な挙動。そう「スマホ」中毒の患者たちだ。かれらはいつだってスマホ画面から目を離さない。死に際でも意識がある限り見続けるのじゃないか。「授業中の携帯禁止」とお触れを出しても、効き目なんかありゃしない。
酷暑が続いたこの夏、コンビニのアイスクリーム販売用冷蔵庫に寝そべった若者の写真が「Facebook」に投稿され“炎上”した。ガキの「悪ふざけ」じゃないのと思っていたら、「世間の目」は厳しい。「汚い、不衛生だ」などと騒ぎになり、コンビニ会社が「食品を取り扱うものとしてあってはならない行為」として謝罪、この店とのフランチャイズ契約を解約したという。 「悪ふざけ」を堂々と世間の目にさらすのは、スマホの普及と関係がある。少壮の社会学者、鈴木謙介は「朝日新聞」(10月1日夕刊)のインタビューで、この若者は「悪い」と知りながら写真を撮って自慢したのだとし「職場で求められる振る舞いよりもネットでつながった仲間からの期待を優先する選択だ」とみる。この選択を可能にしたのが「現実の多孔化」と呼ぶ、ネットによる社会空間の変化。現実に多くのアナが空いている? 「かつてならその場に居合わせた人は、だいたい空間を共有していたと信じられたが、今は違う」とし「空間にアナが空いてネットを通して情報が出入りするイメージ。近くにいる人が、全く違う情報空間を生きていることが当たり前になった」と解説する。鋭い分析。教室という同じ空間にいても、スマホ学生はその空間を共有していない。机の下でスマホ画面に指を触れながら、仲間と共有する空間を生きている。 「職場で求められている振る舞いより、ネットでつながる仲間の期待に応える」を全面否定する気はない。伝統的な終身雇用と年功序列が維持できなくなり、徳川時代以来、日本の政治・経済・社会構造を支えてきた「タテ社会」も揺らいでいる。しかし「ブラック企業」が生き延び続けている現実は、企業のタテ型秩序が依然として強固で、多く人たちが抵抗もせず、従順であることを物語ってはいないか? この夏放送された民放のTVドラマ「半沢直樹」最終回の平均視聴率は、関東地区で42・2%だったという。「倍返し」や「土下座」を流行らせた番組の最終回は、半沢が取締役会で上司を土下座させる。しかし昇進間違いなしと思われた人事異動では、まさかの出向命令。勧善懲悪の時代劇「赤穂浪士」の結末と同じだ。主君の敵討ちをした後「四十七士」に待ち構えていたのはご褒美ならぬ「お家断絶」と「切腹」。組織を守る「タテ秩序」は簡単に滅びない。(写真説明 facebookに投稿された冷蔵庫に横たわる若者)
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