<アーカイブへ>「タイガーマスク」が、日本全国で増殖を続けている。昨年のクリスマスの夜、前橋市の児童相談所に「伊達直人」(アニメ「タイガーマスク」の主人公)を名乗る正体不明の人物が、10個のランドセルをプレゼントしたのが発端。その後、慈善の輪は連鎖的に広がり、すべての都道府県の養護施設で「寄付」が確認され、件数は335件(1月12日現在)に上った。ほとんどお祭り状態。
寄付するキャラも伊達直人だけじゃない。「巨人の星」の星飛雄馬から、画家の山下清を意味する「やましたきよし」や「クレヨンしんちゃん」の主人公「野原しんのすけ」もあった。プレゼントの品も当初のランドセルから現金、お米、お菓子などバラエティに富んできた。中には、「自家製ハム」なんてのもあって、とてもじゃないが「毒味」しないで子供には与えられない。 深夜忍び込んでプレゼントを置いていく「星飛雄馬」も。フジテレビによると、徳島県のある児童養護施設の防犯カメラに、怪しい4人の人影がー。「4人の人影は大きな段ボールを抱え、施設の玄関まで来ると、それを置いて素早く立ち去った」という。箱の中身は「お菓子や文房具」というが、なんだかコソ泥みたいな「飛雄馬」だ。 オット、口さがない夕刊紙はタイガーマスクの経済効果に着目したぞ。兜町関係者の話として、社名にタイガーの入った大手ホース会社の株が急上昇したほか。ランドセルや学習机を売る家具量販店、タイガーマスクの名前を付けたパチンコ機メーカーなど「タイガー23銘柄」を表にした(1月14日付「日刊ゲンダイ」)。これを見て株を買えば、確かに株価は上がるかもしれない。同紙は「どこぞの誰かがタイガー銘柄を仕掛けて大儲けをたくらんだ?」とオチョクル。 日本人ほど偽善という言葉を嫌う国民はいないかもしれない。偽善とは「善良と偽ること。これを行う者は偽善者と呼ばれる」とwikipediaは書く。慈善コンサートなど「祭り」には恥じらいなく参加できても、「善行」が広く知れ渡ると、周辺から「虚栄心や利己心から」と勘繰られやしないかと「勘繰る」。だから慈善活動や寄付は、できるだけ匿名を希望する人が多い。 家族や地域の共同体が崩れ、それに替わる絆がみつからないまま、孤立意識を抱え込む人びと。幼児虐待や高齢者の孤独死の増加がそれを裏付ける。何とかしたいが、偽善ととられるのは嫌だ。精神科医の斉藤環は「キャラになりきることは、実名と匿名のちょうど中間の選択として、まことに格好のアイデアだったのだ。キャラは必ずしも『匿名』ではない。少なくともメディアやうわさの中では『あれは自分だ』という同一性が保たれる」(1月23日付「毎日」朝刊)と分析した。(了)
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