<アーカイブへ>性格はプラグマティック。小心であまり心を開かず、時機をうかがいながらカードを切る」。世界を左右するある中国人の性格や身辺について、米外交官がまとめた「秘密電報」の中身を紹介する。この中国人とは、胡錦濤に代わって共産党のトップの総書記に選ばれた習近平のことである。電報は続けてこう書く。「酒はそれほど飲まない。汚職など金銭にはきれいで好色でもないが、政治的野心だけは旺盛」。うーん、ここまで読むと「用心深い、権力亡者」のネガティブ・イメージしかわかないな。
「最初の結婚相手は駐英大使の娘だったが、仲が悪く喧嘩が絶えず離婚した」。「政略結婚」の典型か? まさかDVだったんじゃないだろうな。いまのファーストレディーは、有名な美人歌手の彭麗媛。「再婚後は浮いた話もなく仕事に専念」とある。福建や浙江省の地方政府で研鑚を積んだが「地方にいたころ仏教の密教と気功に熱を入れたことがある。でも民主改革にはまったく関心なし」。13億のリーダーともなると、ちょっと油断すれば足を引っ張られ、重慶の元トップみたいに権力の座から転落する。密教と気功に凝ったとすると、自己保身とストレスの重圧から解放されるための精神修養だろうな。 オット肝心な話を忘れるところだった。前回2007年党大会の時のこと。メディアの前に姿をみせた彼のある一点に米国記者が着目した。それはズボンの丈の短さ。「党大会のような重要な会議でも、安物の白いソックスをズボンの裾からのぞかせている無骨な田舎者」と表したのである。どちらかと言えば、「落としめて持ち上げる」コメントである。 「ズボンの丈の長さ」で思い出した。最大の発行部数を誇るY紙の「IPS細胞で世界初の心筋移植手術」という“大スクープ”が、大誤報と分かった事件。その疑惑の主が森口尚史氏だ。俳優・長門裕之を小粒にしたような、おとぼけキャラはなかなかのもの。手術成功の様子を得意げに話す森口氏が、カメラに向かってにんまりする顔をみて鳥肌が立ったのを覚えている。ただここで問題にするのはそのことではない。疑惑が持ち上がってからの大手メディアの対応である。 ニューヨークで、のらりくらり受け答える氏に「本当に手術したのかどうか、はっきり答えろよ!」と大声を張り上げる記者。かくも卑しき正義の味方。虚言を見抜けなかったあなたがたの責任は?と聞きたくなる。極めつけは、森口氏に乗せられなかったA紙の勝ち誇ったような報道だった。同紙に売り込みにきた彼の服装をこう書いた。「丈が少し短いスラックス、ぴったりした黒のTシャツ」。いかに怪しげだったか、外見から読者に納得させようという文章だ。優れた表現だが、服装から人の品定めするエリート記者の卑しい視線でもある。(了)
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