<アーカイブへ>「これ、オフレコですからよろしく」。霞ヶ関の官僚や政党幹部、大使館高官と懇談する際、「オフレコ」という縛りがかかることがある。たいしたヒミツがあるわけではないけど。でも縛りがかけられても記者のメモをとるペンの音やレコーダーが止まることはない。じぇじぇじぇ!オフレコって「記録にとどめない」(英語のOff the record)のことでしょ。つまり、メモとっちゃいけないんじゃない?
国によって違いはあるけど、日本ではオフレコ懇談は「背景説明」と理解されることが多い。つまりソースの名前をぼかせば、発言内容を報道してもよいということである。内輪話をしよう。政治部原稿で「政府首脳は○○日、政府が衆院を解散する方向で調整に入った、と語った」と書いてあれば「政府首脳」とはだいたい官房長官を指す。海外特派員の記事で「外交筋」とは、特派員が駐在する国の日本大使館を意味する。中には自分の考えや意見を「観測筋」というソースの見方のように書くケシカラン記者もいる。要注意。 本題に移ろう。特定秘密保護法だ。この法律は「防衛」「外交」「テロ」などの分野で、行政機関の長(大臣)が「特に秘匿することが必要である」と判断すれば「特定秘密」に指定できる。そしてこの秘密を漏らした公務員はもちろん、漏らすようそそのかした者にも懲役10年以下の罰則が課せられる。問題は、安倍政権が多くの反対意見を無視したことだけじゃない。秘密に関わる公務員とその配偶者に対して適正調査が行われるのだが、日本の政治風土から考えると、中国人や韓国人と結婚している公務員は全員バツだろう。元外交官の佐藤優は「人種差別条項」と呼んでいる。 自民党の石破茂幹事長は、報道機関がヒミツを報じることについて「何らかの方法で抑制されることになる」と発言した。気になるのは「抑制される」という言葉に主語がない点である。多くのメディアは「国家権力が抑制する」と読み込んだようだが、それだけではあるまい。メディアが「自己抑制すべし」ともとれる。天下の悪法が施行された途端、権力がキバをむき出して国民を抑圧する… そんなマンガチックな図式をイメージしては、事の本質を見誤る。 外からの圧力より恐いのがメディアの自己規制である。満州事変(柳条湖事件)から日中戦争へと突き進んでいったのは軍や政府だけではない。メディアも批判どころか、積極的に推進役を担った。石場発言の狙いもメディア自身の自己規制にある。「開戦危機!日米同盟vs中国空軍」。週刊誌に躍る見出し。中国と韓国・北朝鮮報道に関する限り、大手メディアは官僚の「オフレコ」懇談の意図を汲んで、ちゃんと好戦的な記事を書いてくれる。(了)
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